XPS とは何か

Last Updated 2011/09/21


XPS とは何かをキーワードにして WEB を検索すると、PDF キラーという表現が多く見受けられます。本当にそうでしょうか。

WEB サイトをうろついていて入手した資料の中に、「Microsoft tech-ed 2008 開発者なら知っておきたい XAML の書き方」というものがありました。これがなんと、 PDF で配布されています。ここは当然、XPS で配布すべきでしょう。つまり、現在の段階(少なくとも、2008 年の時点)ではとても PDF キラーとはいえないことを Microsoft 自身が認めたようなものです。

Note ただし、この文書自体はグレープシティ株式会社が作成したもののようですが。

PDF とは何かについてはほかのサイトをあたってもらうとして、ここでは PDF と とXPS とを対比する形で説明します。

PDF もそうですが、XPS も元来文章を印刷するための技術として開発されたものと理解しています。事実、Windows Vista の印刷用スプールファイルは XPS の形式になっています。ちなみに、PDF は PostScript に対応するためだと思います。

Note Windows 95 から Windows XP までは EMF(拡張メタファイル)の形式でしたが、それと対比的ですね。

印刷業界の実務についてはよく知りませんが、かつて本を執筆したときに出版社から編集済みで印刷直前の状態のものを PDF で送ってもらったことがあります。出版社に聞くと、この処理は簡単にできるので手間ではないということでした。つまり、PDF も XPS も電子ペーパーとしての利用価値は副産物だったのではないかと思います。

ここからは少し技術的な話を交えたいと思いますが、ある機能が PDF にはあって XPS にはないとか、これをサポートしないからダメとか言ってみてもせん無いことです。というのは、世の中が要求するのであれば必要な機能は当然追加されるはずだからです。詳しくは知りませんが、PDF もそういう経緯をたどったものと思います。

さて、PDF および XPS を見るにはどうするか。PDF は無料で公開されている Adobe Reader をインストールしておけば .pdf ファイルをエクスプローラでダブルクリックするとビューワーが開きます。XPS は Windows Vista であれば最初からビューワーの機能がインターネットエクスプロラ(以後、IE)に仕込まれていますので、.xps ファイルを選択すると IE が開きます。

Note Windows XP の場合は WEB サイトから必要なファイルをダウンロードし、インストールしなければなりません。

IE がビューワーをかねていますので、XPS ドキュメントに WEB サイトへのリンクがあればそのまま移行できます。ただし、テストしたところ、XPS ドキュメントに仕込んだ注釈やマーカーの機能には反応しませんでした。

Note 注釈はいわゆる付箋です。つまり、XPS ドキュメントの中にメモを組み込む機能です。マーカーは文章の中の注目したい箇所に線を引くとか、色付きのマーカーペンで行に色を付ける機能です。

XPS をドキュメントの配布用として使う場合、PDF のほうにある「しおり」機能、つまり、目次(インデックス)を表示する機能がほしいところですが、ないようですね。各ページのサムネイルを表示する機能はありますが、ページ数が多い場合、目次は必須でしょう。

Note その後の調べで、XPS にもアウトライン機能というものがあって、目次をツリー表示する機能があることが分かりました。しかし、WPF にはこれを設定するための機能がありません。FixedDocument を直接編集すれば可能のようですが、詳しいことは不明です。

いずれにしろ、ドキュメントを見るという機能に大きな差はありません。

次に、ドキュメントを作成する手順ですが、PDF の場合は Adobe が開発・販売しているツールを使う方法がもっとも高機能です。ただし、値段が高いですね。HTML から PDF に変換するツールはたくさんありますので、これを利用している人が多いと思います。ただし、この方法では HTML の機能の範囲内にとどまるという欠点があります。

XPS を編集・作成するツールはいまのところ Office 2007 の MS-Word だけといっていいと思いますが、WPF "Windows Presentation Foundation" を使えば XPS ドキュメント作成ツールを自作することができますから、いずれ編集ツールが出てくるものと期待したいところです。

Note MS-Word 以外に XPS を作る方法があります。ドキュメントを印刷するときにプリンタを選択することができますが、プリンタ名のリストの中に "Microsoft XPS Document Writer" があるはずです。これを選択すると XPS を作成することができます。たとえば、HTML ファイルを印刷するとそのイメージどおりの XPS ドキュメントとして作成されます。プレーンなテキストファイルであれば何の色気もないドキュメントになります。

WPF はプログラミング手法の一つですからドキュメントを動的、つまり、データの操作をともなって作成することができるメリットは大きいのではないでしょうか。たとえば、グラフをドキュメントに追加する場合、PDF では別途に作成した画像として追加するしかありませんが、XPS では動的に作成したオブジェクトとして追加できます。したがって、XPS の普及の鍵は WPF が握っているのかもしれません。

Note PDF の作成方法に関する知識が少ないので、PDF では動的なデータの作成ができないと理解していますが、技術的には可能なのかもしれません。

とりとめのない話になってきましたが、まとめに入りましょう。PDF と XPS はともに見るだけなら OS 環境に依存しませんが、XPS のほうは事実上 Windows 環境で使うことが前提になるでしょう。つまり、XPS は PDF キラーではなく、根本思想が異なる別個のものではないかと考えます。現在のところ、普及度や手軽さでは PDF に軍配を上げざるを得ませんが、XPS は未完成だが未来的といえるかもしれません。少なくとも、HTML 形式のヘルプファイル(.chm ファイル)にとってかわる日がくるのではないかと思います。

−以上−